2019年に新しい鉱物としてIMA(国際鉱物学会)に登録されたLaurentthomasite(英語発音ローレントーマサイト、発見者に因んだフランス語発音ローホントマジット)についてご紹介いたします。このマダガスカルから発見されたこの石は新鉱物であるという魅力的だけでなく、ジェムクオリティの透明度が高く、きれいな色の結晶が産出することから、また新しい宝石としても注目されるものになりそうです。
特性値と宝石学的特徴
同じマダガスカルから産出することから、グランディディエライトと混同されて流通する状況が起きているようです。弊社でもローレントーマサイトではないかと持ち込まれたものがグランディディエライトであることがたびたび起きています。簡単な鑑別器具で区別が可能であることから、参考になればと思います。ローレントーマサイトの特性値は次のとおりです。
屈折率はmindatなどによると理論値としては1.540-1.545ですが、実際弊社で見たものでは1.555 – 1.560(+0.005)でした。
比重は理論値としては2.66~2.67で、実際は2.67前後でした。
結晶系は六方晶系であり、多色性は強い2色性として青と黄色で、硬度は6程度です。
一方で混同されやすいグランディディエライトは、屈折率は1.58~1.62、比重も2.85~3.09とローレントーマサイトより高いものです。また、結晶系も斜方晶系であるため、多色性は強い3色性で緑青、青緑、無色が見られます。硬度は7.5で、その差は僅かです。このように屈折率、比重、多色性を確認できれば、この2つの混同を避けることができると思われます。
また、化学組成について、理論的なものではMg2K(Be2Al)Si12O30となっていますが、鉄Fe、スカンジウムSc、マンガンMnが主要構成元のアルミニウムAl、マグネシウムMgと同程度と多く検出されており、これらとの置換によって屈折率が理論値より高くなっていると考えらました。蛍光X線成分分析を行ったところ、重量比で次のような結果でした。
検出元素 | 重量比(%) |
SiO2 | 74.22~79.25 |
K2O | 5.39~6.06 |
Fe2O3 | 3.02~4.54 |
MgO | 3.46~3.76 |
Al2O3 | 2.89~3.56 |
Sc2O3 | 2.83~3.57 |
MnO | 1.83~2.92 |
他に微量のY、Rb、W、Ni、Zn、Gaが検出されています。また、FT-IRのスペクトルは次のようなものした。スペクトルはスギライトに似てますね。
新しい宝石として我々コレクターを魅了するものとなることを願っています。