2015年12月11日、Gem Information 第43号発行の運びとなりました。 43号の内容についてお伝え致します。 近年宝石の産出については、原油価格が高騰したり、環境規制が厳しくなったりしたことで、ネガティブな情報ばかり伝わってきておりましたが、今回の記事でもご紹介させて頂きましたように、パライバ・トルマリンやデマントイド・ガーネットのように以前からの鉱山で産出が再開したという報告がありました。また、半貴石という言い方がなくなるように、実にさまざまな宝石の価格上昇も続いております。 また、今号ではエチオピアから発見されたブラック・オパールやグリーン・アンバーを取り上げました。これらは、すでに処理によるものが市場に広まっており、そこに天然のものの発見があり、通常とは逆に流れとなります。タイトルと致しました「良貨は悪貨を駆逐するか」は、後発の天然のものが処理のものが広まった市場を変えられるのか、それともやはり、目次のように悪貨が良貨を駆逐してしまうのか、という思いで付けたものでございます。 今回は字が小さいというご意見を頂きまして、書式を変えてみました。またご意見を頂ければ幸いです。
Gem Information 第43号 内容紹介
パキスタン産デマントイド・ガーネット
デマントイド・ガーネットにパキスタンの新しい産地が報告されました。こちらはホーステール・インクルージョンも含まれていますが、それ以外のインクルージョンが少ないロシア産とは違い、写真のような黒い結晶が入ったり、また、特徴的な歪みによる干渉像も見られます。色はアフリカのものより強いものが多く、デマントイド・ガーネットの新たな選択肢となればと思っています。
ピジョンブラッドとロイヤルブルー
ピジョンブラッドやロイヤルブルーの記載のある海外の鑑別書が多数見られるようになりました。鑑別機関によってその色の基準も異なれば、見ているポイントも異なります。発表されている内容や個別に伺った内容からその基準を紹介していくと共にそれらの名前の由来となる文化についても考えてみたいと思います。皆様のガイドラインの一助となれば幸いです。
合成ダイアモンドアップデート
インドや中国でダイアモンドの合成を行っている方々からいろいろお話を伺うことが出来ました。特に中国のものはすでにメレー石の商業ベースでの生産が行われています。これまでの、工業用途のものを製造する中で生じた副産物として宝飾用途のものを製造するのとは違い、最初から宝飾用途に特化した製造を行い、効率化している様子が伺えました。また枠付けのままでは最終的な判断ができないことも多く、ルースの状態で検査することが望まれます。
エチオピアの天然ブラック・オパールと天然グリーン・アンバー
処理石が先に市場に紹介されていたエチオピアのブラック・オパールとグリーン・アンバーに天然のものが発見されました。ブラック・オパールは代表的な産地であるオーストラリアのものとの比較を行い、その特徴を解説しました。またペンライトを用いた簡易的な見分け方も紹介しております。エチオピアのグリーン・アンバーはその色やインクルージョンなどの特徴とFT-IRを用いた判別法を紹介しています。 (Sample courtesy of Dr. Lore Kiefert, GGL)
ツーソン・ジェム・ショー 2015のご報告
今年のツーソン・ジェム・ショーは今後の宝石産出に希望を感じさせるものでした。例えば、ブラジルから、パライバトルマリンの産出の再開が報告されたり、モザンビークからサンタマリア・アフリカーナと呼ばれる美しいアクアマリンが産出したりと、特に新しい宝石が発見されたのではないのですが、世界中が待ち焦がれた宝石の産出が再開したようでした。また、この記事ではメキシコの強蛍光のオパールや、アフガニスタンのユニークな結晶の形のアクアマリンなども紹介しております。 また、今年は弊社の檀上もツーソンに足を運び、世界中の鉱山オーナーや研究者と情報交換ができたことが大きな収穫でした。