この度、Gem Information 第 47 号発⾏の運びとなりました。今号では復活したアメリカのスイートホーム鉱山のロードクロサイトやコバルト・ガーナイトなどの新しいお話と、以前にもご紹介した人の目で見たダイアモンドの美しさを評価するオプティカル・パフォーマンスや、国際宝石学会議で伺った研究発表の中での新しい発見など、知っていたようで実は知らなかったというお話を中心にご紹介させていただきます。宝石の特徴と魅力を分かりやすく皆様と共有していけるよう、これからも情報発信に努めて参ります。
デトロイトシティ・ポータルとして復活するスイートホーム鉱山
近年、産出量の減少、採掘コストの増加、厳しくなる採掘ライセンスの条件などで多くの鉱山が閉山に追い込まれている中、閉山した鉱山が再開するといううれしい情報が入ってきました。アメリカ・コロラド州にあるスイートホーム鉱山です。同鉱山はファセットカットできる良質なロードクロサイトを産出することに定評がありましたが、2004年に惜しまれつつも閉山されてしまいました。その鉱山が2018年から以前の鉱山の坑道のすぐ近くから別の坑道を掘る形で、採掘を再開しました。最新情報はCollector’s Edge MineralsのFacebookをご確認ください。
コバルト・ガーナイト
ガーナイトはスピネルの固溶体で、これまでは暗くくすんだ緑色のものしかないイメージでした。しかし、コバルトによって鮮やかな青色をしたガーナイトがナイジェリアから新しく発見されました。スピネル同様にコバルトを含有量したガーナイトは、これまでのイメージを一新する、美しもレアな宝石となっています。
スリランカ訪問記
スリランカの宝石の流通を川上から川下まで訪問する機会を得ました。宝石の採掘はエコを重視したものになり、カットは伝統的な職人技のカットもありながら、人材育成システムを意識した新しい動きも見られます。マーケットでは原産地での鑑別が大盛況でした。一部では写真のような伝統的な加熱が残りながら、コロンボに立つ高層ビル群のようにスリランカも大きく変わりつつあることを感じました。
人が感じるダイアモンドの美しさを評価できるDiBox2.0
ダイアモンドに人が感じる美しさは、ただの光の反射ではなく、人の知覚に影響する光の作用があります。それをオプティカル・パフォーマンスとして以前ご紹介しました。今回それを評価できるシステムDiBox2.0が開発されたのでご紹介させていただきます。4Cとは異なる観点からダイアモンドを見ると、色々な発見がありました。
第36回国際宝石学会議 2019ナントのご報告
2019年8月に開催された国際宝石学会議IGCに参加しました。知見に溢れた発表がたくさんあり、ご紹介させていただきます。ディスロケーション(転移)によるインクルージョン、ブルー・サファイアの色の原因がFe2+ではなくFe3+であること、スター・ダイアモンド、ダイアモンドの色を見るトレイの影響、ブルー・ダイアモンドの生成環境、TypeIIbのHPHT合成ダイアモンドの燐光、オレゴン・サンストーンの色のメカニズム、エカナイトの加熱による変化、ブルー・サファイアの加圧加熱、真珠のDNA検査、LED照明を使った宝石顕微鏡などについてご紹介しています。
Gem News
クロム・カヤナイトの横からだけ見える控えめなカラーチェンジ、ピンク・ポウドレッタイト、ピンク・グロッシュラーの色原因、“レインボー・アルバイト”、“サンストーン・アクアマリン”、残念な“レッド・デマントイド”、“ドラゴンズ・ティース・アメシスト”、“ファントム・フルオライト”などについてGem Newsとしてご紹介します。