2) 加熱加工に用いる炉

Hearth for the treatment

加熱加工に用いられる炉には、大きく分けて電気炉とガス炉の2つのタイプがある。電気炉は熱電対温時計や自動装置を取り付けることによって、時間と温度を正確に調整できる。何時間で何度ずつ温度を上げ下げするかという細かい設定が出来る。しかし高温加熱を長時間継続するために、炉の中の発熱体がすぐ溶けてしまい、炉全体を取り替えなくてはならなくなるという。?

? 一方ガス炉は、大中小の3種類あり、今回使用したのは小のガス炉(写真1)だった。サイズは小が直径75×60cm、中が直径75×80cm, 大が直径75×100cm程で、それぞれ4箇所の入り口があり、そこから燃料が送り込まれるようになっている。試しに、写真1にあるように1800C近い高温で加熱しているガス炉のそばに立ってみたが、熱すぎていられないほどだった。差し込まれている四本のパイプからは、プロパンガス、酸素と、水が流し込まれていた。この水は1800Cで加熱しているバーナーの先端を水冷方法で冷やすためで、それで長時間加熱する事が出来るとの事だ。この方法を考えつくまでは、何度もバーナーの先端を溶かしてしまったり、爆発を起こしたりした事もあったという。主な燃料であるプロパンガスも長時間高温で使用し爆発の恐れもあるので、水の中で冷やしていた。 又途中から還元度を上げるために灯油を加えるので、そのための配管もされていた。

新しい加熱加工では、約7?8時間かけてゆっくりと温度を上げ、4?5時間高温を維持し、冷やす時も同じ時間をかける。電気炉では細かい調整が出来るため、同じ時間でもゆっくりと温度を上げていく。特に価値の高い大きな石や、質の良い原石には電気炉を利用するとの事だ。約2日間かかる工程の後、中まできれいに色が変わって仕上がる石もあれば、途中まで変わってカラーリムが見える石もある。しかしカラーリムの見える石も、もう一度、二度と加熱を繰り返す事によって中心部にあった要素が反応して色が変わり、カラーリムの見えなくなる石がある。ただし逆に何度も加熱加工を繰り返しても元のピンク色のままで、全く変化しない宝石もあり(写真2の下段は10回加熱したが、最初のピンク色のままである)、ベリリウムの加熱加工が色の直接の原因になっていない事がはっきりしている。

写真2.

上段: ベリリウムを加えて1回の加熱後に、既にパパラチャ色に変化した2ピース

下段: イラカカ産の天然ピンクサファイアをベリリウムを加えて10回も加熱したが、ピンクのままで全く変化しなかった4ピース

加熱加工に用いるルツボの素材は、高温に耐える99%以上の純度の高いアルミナセラミックを使っている。コランダムもアルミナであり、同じ素材を使っているという事に少し驚いた。又ルツボのサイズも重要で、大きさ、形の違いで20種類以上もあった。 その使い分けは、石の大きさのみならず、どこの産地からの石であるかによっても使い分けているという。産地により同じ宝石でも微量に含まれている元素が異なり、それが影響を及ぼすためと思われる。

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