☆☆☆ Gem News ☆☆
日独宝石研究所 2005.09.28
最近急激なスピードで日本の宝石業者が取り扱い始めているアイテムの中に、16×12mmや18×13mm等の大きなサイズのグリーン・クォーツがある。しかも驚いた事に、1カラット単価が数ドルの安さで取り引きされているという。どういうことだろうかと疑問を抱き、当研究所顧問のドイツ宝石学協会のバンク博士に問い合わせてみたところ、30年前に流通したといわれる加熱前の原石と加熱後の原石、それにカットされたグリーンド・アメシストが送られてきた。
グリーンド・アメシストというのは、1954年にブラジルのミナス・ジェライス州のモンテズマ鉱山で発見されたアメシストを約650℃で加熱する事により、美しいパステル調の透明グリーン・クォーツに変化させたものである。モンテズマ鉱山のアメシストは天然の照射を浴びているために、加熱されることにより鉄の二価が一価に還元されるために、この色の変化が起こる。アメシストがグリーンに変わったという意味で、グリーンド・アメシストと名づけられ、以前から高価な希少石として、ペリディーン(Peridine=ペリドートとシトリンの合成語)やプラシオライト(Prasiolite)の別名で取り引きされてきた。
しかし、最近流通している大きなグリーン・クォーツを鑑別してみると、完全にそれらとは違っている事に気が付いた。最近の石はカラー・フィルターで赤味があり、特に大きく濃色の石ほど赤味が強い。紫外可視分光光度計で測定したところ、610?620nmに吸収が現われ、昔のグリーンド・アメシストとは完全に違っていることが判明した。
9月27日の宝石鑑別団体協議会(A.G.L)の色石委員会で取り上げられ、これらは照射により色が変わっているために、開示コメントは“色の変化を目的とした人為的な照射処理が行われています。”を記載する事になった。また、“グリーンド・アメシストと呼ばれています”という一文は、この石には使用しないことに決定された。