輝かしい年頭にあたり 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
昨年も格別のご用命を賜り厚く御礼申し上げます。
皆様のますますのご発展を祈念しますとともに、
本年もなお一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
令和6年 元旦 日独宝石研究所 所員一同
年賀状に用いました写真のご説明をさせていただきます。
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昨年はIGC 国際宝石学会が日本で開催されました。主催国として多くの国々の研究者を日本にお迎えできたことはとてもうれしかったですし、コロナ禍の後初めてのリアルでのIGCでした。久しぶりに皆様にお会いし、リアルでこそできる活発な議論ができたことも喜びでした。学会でのお話はまた、次号のGem Informationでご紹介できればと考えています。
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IGCでは、オプションで山梨ツアーも行いました。こちらは参加された方が、山中湖のホテルから撮影した夜の富士山です。このような富士山を見れたことをとても喜んでおられました。
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昨年、新しい石としてマーケットに話題になったものが、”ドラゴン・ガーネット”です。こちらは蛍光のあるマラヤ・ガーネットということで、弊社のGem Information Vol.46でも珍しいものとしてご紹介したものですが、その時はそれほどの魅力を見出せませんでした。
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またこのガーネットは、色の吸収が非常に弱く、曖昧で蛍光があるだけでなく、光源の違いで色々な見え方になります。以下は弊社にあったライトで試したものですが、ネイルの硬化用ライトでは全くの別のものに見えました。近年LEDのおかげでいろいろなライトが使えるようになりましたが、宝石は見え方が変わるものが多く、楽しいですね。
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こちらは、蛍光しないマラヤ・ガーネットの中に見られた、サファイアのインクルージョンです。色味からすると、パパラチアのようで、パパラ好きとしてはたまらない1石でした。
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昨年のIGCでは、ベトナム バイヴォイ鉱山のコバルト・スピネルについて発表を行いました。特徴的なインクルージョンも多く見られ、こちらはスフェーン(チタナイト)のクラスターのインクルージョンです。
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こちらはベトナムのコバルト・スピネルに特徴的だと言われていた雪花状のインクルージョンで、バイヴォイ鉱山のものにも、同じように見られたものです。しかし、近年マダガスカル産のスピネルにも同様のインクルージョンが発見されたということで、難しいものです。
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こちらはミャンマー産のスターペリドットに見られる、チューブ状のインクルージョンです。これらが原因となってスター(アステリズム)が生じています。このアングルとほぼ垂直の方向にはより微細なインクルージョンがあり、片方がはっきり、もう片方がぼやっとしたペリドット独特なスターになっています。
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ミャンマー産のスターペリドットです。また、宝石学会(日本)でもご紹介したのですが、スターって石が長いとその長辺方向に引っ張られるんですね。恥ずかしながら、このスターペリドットを調べている中でようやく気づきました。
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こちらの青い石は何だと思われましたか?なんとグランディディエライトなんです。ファセットカットできるほどの透明度の高い(ジェムクオリティの)グランディディエライトが市場に現れたときは本当に驚いたものですが、それがさらにきれいにメレーサイズに、カリブレーションカットされたものです。
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青いメレー石というとパライバ・トルマリンがよくジュエリーに使われていますが、色の濃いグランディディエライトはメレーサイズでも色がしっかりとしていて、こちらの写真のようにピンク・サファイアと合わせてもきれいです。またこちらはカットも非常に良く、多数並べると、とてもよい輝きです。以下のカットされる前の原石の写真はSHOHAMのGilad Deutscherさんから頂いたもので、今年1月のIJT 2024(12-41)にも出店されるそうです。
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こちらはミャンマーのルビー中に見られたカルサイトのインクルージョンです。インクルージョンの写真はなかなか顕微鏡で見ているように撮れないことが多いのですが、こちらは表面の干渉色も、目で見た時に近い印象で撮ることができました。
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こちらは自然銅を伴ったアゲートです。部分的にはクリソコーラになっていたものもありました。自然金がクォーツに含まれているものは有名ですが、銅のものでこのようにカットされたものは初めてでした。このような2つとして同じものがないものは、アゲートの魅力ですね。
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昨年はインクルージョンの講演もさせていただきました。その中で液体のインクルージョンとして、オイル入りのクォーツを紹介しましたが、オイルなので蛍光するんです。その蛍光したオイルの中を気泡が動く様子は新鮮でした。
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こちらはスリランカのサファイアに見られた液体のインクルージョンです。薄い膜状のインクルージョンで光の干渉が起こり、七色に見えている様は、虹が宝石に閉じ込められたように感じます。今年はインクルージョンの写真に力を入れていきたいと思います。
本年もより一層、研究を深め、サービス向上に努めてまいります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
鑑別王におれはなる!!
日独宝石研究所 所員一同 令和6年元旦